仮想通貨の取引や支払いに対する確定申告と税金の計算方法について

ビットコインと仮想通貨

ビットコインやイーサリアムを始めとした仮想通貨(暗号通貨)の取引が拡大しています。

2017年は年初から年末にかけて各仮想通貨の価格が大幅に上昇したことから、億り人に代表されるように多くの利益を挙げている人がいますが、仮想通貨の取引で利益を挙げた場合は、確定申告にて税金を収める必要があります。

今回は、仮想通貨の取引で利益を挙げた場合において、どんなケースにおいて確定申告が必要なのか、税金の計算方法はどうするのかについてまとめてみました。

確定申告が必要なケース

確定申告書類
確定申告書類

仮想通貨にまつわる所得は、国税庁の見解によると雑所得に分類されることが公開されています。

仮想通貨の税務上の取扱い−現状と課題−|論叢|税務大学校|国税庁

そして、雑所得がある場合において、どんな時に確定申告が必要なのかというと以下のケースになります。

  • 1月から12月の1年間において、雑所得が20万円以上
  • 1月から12月の1年間において、雑所得が20万円未満だが、医療費控除や住宅ローン控除のために確定申告する人

keiei.freee.co.jp

仮想通貨の取引や利用した事で、利益が年間で20万円以上あれば確定申告をおこなって、税金を収める必要があります。

逆に利益が20万円以下でも、他の理由で確定申告が必要な場合は、仮想通貨の利益についても申告を行い税金を納めないと脱税となります。

それでは、次から仮想通貨に関して具体的に確定申告を行う必要なケースについて解説していきます。

仮想通貨の売買や使った時に雑所得として見なされるケース

仮想通貨の取引をしていると、仮想通貨を日本円に戻したタイミングで利益が発生していると税金が発生するという理解はされていると思います。

仮想通貨から日本円に換金
仮想通貨から日本円に換金

しかし、実際には下記に示したように、他の仮想通貨に交換したり、仮想通貨で車を買ったり、マンションを購入したりした場合も、所得が発生したとみなされて課税対象となります。

  • 仮想通貨を売却して日本円にした時
  • ビットコインを売って、イーサリアムを購入するなど他の仮想通貨に交換した時
  • 家電量販店などのお店でビットコインやモナコインなどの仮想通貨を使って商品やサービスを購入した時

仮想通貨を日本円に戻さなければ税金を払う必要がないと思い込んで、高額商品を仮想通貨で購入して税金の支払いを逃れようとしても脱税となってしまうので注意してください。

所得税や住民税以外に消費税も払う必要がある

仮想通貨の取引にまつわる利益において、注意しなければならないのが消費税の納付義務があるということです。

通常雑所得に課せられる税金は所得税と住民税ですが、仮想通貨の取引時期によっては8%の消費税を収める必要があります。

ではその時期とはいつなのか?というと、2017年6月30日以前に仮想通貨の売買や使用など先程紹介した雑所得と見なされる場合です。

対して2017年7月1日以降に仮想通貨の利益を確定した場合は、消費税の納付義務はありません。

これは、2017年4月に施行された改正資金決済法によって仮想通貨については他の電子マネー同様に消費税が二重課税されないように改正されたためです。

仮想通貨の取引で税金が発生しないケース

  • 含み益がある状態(利益が確定していない)
  • ある仮想通貨から他の仮想通貨に分岐したケース

ここまで主に、仮想通貨の取引や使用において税金が発生するケースを紹介してきましたが、今度は税金が発生しないケースについて紹介します。

まず、税金は所得が発生したタイミングで課税されるので、まだ利益が確定していない含み益がある状態では当然税金は発生しません。

そして仮想通貨特有なのが、ビットコインからビットコインキャッシュに分岐したケースのようなケースです。

この場合、ビットコインキャッシュを付与されたタイミングでは利益は確定していないので、税金を収める必要はありません。

但し、当然ですが、付与された仮想通貨を売却した時や使った時には利益が確定するので、税金の納付義務が発生します。

税率

仮想通貨の取引に関する所得は雑所得になるため、最高税率は所得税と住民税をあわせて55%となります。

所得税の税率は、会社からの給与所得(年収から社会保険料などを引いた額)と仮想通貨の利益を合算した所得金額によって、下記のように変化します。

所得金額(給与所得+仮想通貨利益)所得税の計算式
195万円以下所得金額x5%
195万円超330万円以下所得金額x10% – 9万7500円
330万円超695万円以下所得金額x20%- 42万7500円
695万円超900万円以下所得金額x23% – 63万6000円
900万円を超1,800万円以下所得金額x33% – 153万6000円
1,800万円超4,000万円以下所得金額x40% – 279万6000円
4,000万円超所得金額x45% – 479万6000円

住民税の税率は、所得金額に関わらず10%となっているため、仮想通貨に関する最高税率は55%となります。

仮想通貨に関する税金の計算方法

仮想通貨の取引は価格の変動が激しいだけにデイトレーダのように、何度も取引を繰り返している人も多いことだと思います。

税金は毎年1月1日から12月31日までに発生した利益の総額に対して課せられることは、既に解説した通りですが、何十回や何百回にも取引が及ぶと、その計算が煩雑となります。

利益の計算は、仮想通貨の売却価格から1単位あたりの取得価格に単位数を掛けたものを引いて計算しますが、ここで問題となるのが、取得価格の計算方法です。

仮想通貨に関する所得の計算方法等について

移動平均法と総平均法

計算方法としては、移動平均法と総平均法の2通りあります。

  • 移動平均法:売却時ごとに、その時の平均取得価格を計算する方法
  • 総平均法:1年を通した平均取得価格を計算する方法

このうち厳密に利益額を計算が出来るのは移動平均法になりますが、取引回数が多い場合だと煩雑でミスが発生しやすいです。

それに対して総平均法は計算が比較的簡単です。

汐留パートナーズ税理士法人によると、アルトコインの売買などで複数の口座を利用して仮想通貨を売買している人は、総平均法を利用して計算するのが現実的だとしています。

それでは、ここで2通りの計算方法について例を用いて紹介します。

まず、今年1年間におけるビットコインの取引が以下のような場合だとします。

取引日取引内容
2月1BTCを10万円で購入
5月3BTCを90万円で購入
11月2BTCを180万円で売却
11月1BTCを100万円で購入
12月1BTCを200万円で売却

移動平均法による計算例

まず移動平均法を用いて計算すると、11月の平均購入価格と12月の平均購入価格を別々に計算して利益額を算出します。

11月の単位当たりの平均購入価格は、

100÷4=25万円

となり、利益は、

180ー25×2BTC=130万円

となります。

続いて12月分を計算します。

平均購入価格は、

{25×(4-2)+1×100}÷3=50万円

となり、利益は、

200ー50×1=150万円

となります。

即ち、移動平均法による税金の計算対象となる課税対象金額は280万円となります。

総平均法による計算例

次に総平均法で計算してみましょう。

年末時点の平均購入価格でそれぞれの利益を計算します。

1年間の単位当たりの平均購入価格は、

200÷5=40万円

となります。

11月売却時の利益は、

180ー40×2=100万円

となり、12月売却時の利益は、

200ー40×1=160万円

となります。

即ち、総平均法による税金の計算対象となる課税対象金額は260万円となります。

この結果、今回の取引においては総平均法の方が、税金は少なくなります。

国税庁は移動平均法を推奨

国税庁の見解としては、移動平均法による計算を原則としていますが、次年度以降も同様の方法で計算し続けるならば総平均法も認めています。

そのため、途中で計算方法を変えることは出来ないので、年によって有利な計算方法を選ぶということは出来ません。

因みに、2017年のように仮想通貨の相場が右肩上がりの時は、総平均法で計算した方が利益額は少なくなり、税金を節税できます。

右肩上がりの相場だと総平均法による計算が有利
右肩上がりの相場だと総平均法による計算が有利

これは、年後半になるに従って仮想通貨の取得単価が高くなり、利益確定した時の売却益が減るためです。

仮想通貨で買い物した時の税金計算方法

ビットコインを始めとした仮想通貨で、家電や車、マンションなど不動産を購入した時にも利益確定となり、税金が発生します。

ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係|国税庁

これは、仮想通貨を一度換金して、商品を購入したと見なされるからです。

具体的な課税対象金額の計算式はどうなっているかというと、以下の通りです。

(商品の価格)ー(仮想通貨の取得価格)×(仮想通貨の使用量)=課税対象金額

課税対象金額に各個人の税率を掛ければ、支払う税金の額が確定します。

上述の計算式を使って、具体例を交えて解説していきます。

まずビットコインを1BTC10万円で購入し、1BTC30万円の時にビットコインを利用して10万円の家電を購入したとします。

この時支払いに使ったビットコインの数量は0.33BTCになります。

そのため課税対象となる金額は、

10ー10×0.33=6万7000円

となります。

この6万7000円に10%や20%といった税率を掛けることで税金が確定します。

因みに、仮想通貨で商品を購入した時の仮想通貨価格が、取得した時よりも下がっていれば利益はありませんので、上記の計算は不要です。

ツールを使って作業を効率化

ここまで仮想通貨の取引にまつわる税金の計算方法について紹介してきましたが、そうはいっても取引の数が多い人は、計算が面倒くさいと思います。

そういった時に活躍するのが、仮想通貨に特化した税金の計算ツールです。

ここでも基本利用料金が無料のツールを幾つか紹介します。

Keiry

コインチェックとZaifにPoloniexに対応したツールです。

国内外の取引所の取引履歴・入出金履歴やウォレット送受信履歴を時系列に並び替えて、国税庁の見解に沿った損益を、移動平均法・総平均法で算出します。計算結果の帳簿はExcelでダウンロード可能です。

(注意)2018年11月で開発が終了しました。

Keiryは2018年11月で開発終了
Keiryは2018年11月で開発終了

BitTax

BitTaxは、bitFlyerとZaifにコインチェックといった国内の大手仮想通貨取引所に対応しています。

www.zbuffer3dp.com

(注意)2018年12月時点でサイトにアクセス出来ません。サービスが終了した可能性が高いです。

海外の仮想通貨取引所にも対応しているCryptact

Cryptactは、bitFlyerやZaifにbitbankといった国内の取引所だけでなく、バイナンスを始めとした海外の仮想通貨取引所にも対応しているのが特徴です。

Cryptactは、2020年5月時点で41取引所に対応しています。

仮想通貨の節税と事業所得

先程紹介したように、雑所得だと所得額が大きくなるにつれて税率が高くなります。

そのため、仮想通貨の取引で巨額の利益が発生した人はなんとか節税できないかと考えます。

その1番の手法が仮想通貨の利益を事業所得として申告する方法です。

事業所得は損益通算できるなど、雑所得に比べて有利な面が多くあります。

しかし、仮想通貨の税金に詳しい汐留パートナーズ税理士法人の前川さんの見解によると「現実的には事業所得として見なされる事例は無いだろうと」とのことである。

事業所得と見なされるケース

仮想通貨の取引で得られた利益を事業所得として認めてもらうためには、少なくとも以下のような条件を満たす必要があると、前述の税理士さんは述べています。

  • 仮想通貨の取引を1日に相当量行っている
  • 仮想通貨の取引が副業ではなく、主な業務と見なされること
  • 取引専用のオフィスや人の雇用があること

これらのことから、サラリーマンのように給与所得があるような方が、仮想通貨の利益を事業所得として申告することは基本的に認められません。

事業所得として認めてもらうには、専業トレーダーになる必要がありそうですね。

仮想通貨の税金と確定申告に関するまとめ

ここまでの話をまとめると、以下のようになります。

  • 仮想通貨の利益は雑所得に分類され、最高税率は所得税と住民税合わせて55%に達する
  • 年間の利益が20万円以上なら確定申告必須
  • 年間の利益が20万円未満でも、住宅ローン控除を申請する場合などでは、仮想通貨分の利益を確定申告必要
  • 仮想通貨の取引だけでなく、家電やマンションなどの物やサービスを仮想通貨で支払った場合も、確定申告して税金を収める必要がある。
  • 節税のために事業所得にする事はサラリーマンだと基本的に認められない
  • ビットコインからビットコインキャッシュが分岐したような時は、その時点では利益は確定していないので、税金計算は不要
  • 仮想通貨取引における課税金額の計算には移動平均法と総平均法がある
  • 相場が右肩上がりだと総平均法が節税になる可能性が高い
  • 計算方法は次年度以降も同じ方法を使う必要がある

為替取引のFXも当初は税金は雑所得でしたが、今では分離課税となり、税率も20%と一律となって、損益通算も出来るようになっています。

これらのことから、仮想通貨の税金についても、今後何年かかけて徐々に整備されていくことでしょう。

-仮想通貨